Ключ / 鍵. Книга для чтения на японском языке. Дзюнъитиро Танидзаки. Читать онлайн. Newlib. NEWLIB.NET

Автор: Дзюнъитиро Танидзаки
Издательство: КАРО
Серия: Чтение в оригинале (Каро)
Жанр произведения:
Год издания: 0
isbn: 978-5-9925-1637-1
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ヲアチラコチラヘ隠シタリシタノカ。ソレハアルイハ彼女ノ捜索癖ヲ満足サセルタメデアッタカモ知レナイ。ソレニ彼女ハ、モシ僕ガ日記帳ヲ故意ニ彼女ノ眼ニ触レヤスイ所ニ置ケバ、「コレハ私ニ読マセルタメニ書イタ日記ダ」ト思イ、書イテアルヲ信用シナイカモ知レナイ。ソレドコロカ、「ホントウノ日記ガモウ一ツドコカニ隠シテアルノダ」ト思ウカモ知レナイ。………郁子《いくこ》ヨ、ワガ愛スルイトシノ妻ヨ、僕ハオ前ガ果シテコノ日記ヲ盗ミ読ミシツツアルカドウカヲ知ラナイ。僕ガオ前ニソンナヲ聞イテモ、オ前ハ「人ノ書イタモノヲ盗ミ読ミナドイタシマセン」ト答エルニキマッテイルカラ、聞イタトコロデ仕方ガナイ。ダガモシ読ンデイルノデアッタラ、決シテコレハ偽リノ日記デナイヲ、コノ記載ハスベテ真実デアルヲ信ジテホシイ。イヤ、疑イ深イ人ニ向ッテコウイウヲ云ウトカエッテ疑イヲ深クサセル結果ニナルカラ、モウ云ウマイ。ソレヨリコノ日記ヲ読ンデサエクレレバソノ内容ニ虚偽《きょぎ》ガアルカ否《ひ》カハ自然明ラカニナルデアロウ。

      モトヨリ僕ハ彼女ニ都合ノヨイバカリハ書カナイ。彼女ガ不快ヲ感ズルデアロウヨウナ、彼女ノ耳ニ痛イヨウナモ憚《はば》カラズ書イテ行カネバナラナイ。モトモト僕ガコウイウ書ク気ニナッタノハ、彼女ノアマリナ秘密主義、―――夫婦ノ間デ閨房《けいぼう》ノヲ語リ合ウサエ恥ズベキトシテ聞キタガラズ、タマタマ僕ガ猥談《わいだん》メイタ話ヲシカケルトタチマチ耳ヲ蔽《おお》ウテシマウ彼女ノイワユル「身嗜《みし》ミ」、「女ノラシサ」、アノワザトラシイオ上品趣味ガ原因ナノダ。連レ添ウテ二十何年ニモナリ、嫁入リ前ノ娘サエアル身デアリナガラ、寝床ニハイッテモイマダニタダ黙々ト事ヲ行ウダケデ、ツイゾシンミリトシタ睦言《むつごと》ヲ取リ交ソウトシナイノハ、ソレデモ夫婦トイエルデアロウカ。僕ハ彼女ト直接閨房ノヲ語リ合ウ機会ヲ与エラレナイ不満ニ堪エカネテコレヲ書ク気ニナッタノダ。今後ハ僕ハ、彼女ガコレヲ実際ニ盗ミ読ミシテイルト否トニカカワラズ、シテイルモノト考エテ、間接ニ彼女ニ話シカケル気持デコノ日記ヲツケル。

      何ヨリモ、僕ガ彼女ヲ心カラ愛シテイル、―――コノ前ニモタビタビ書イテイルガ、ソレハ偽リノナイデ、彼女ニモヨク分ッテイルト思ウ。タダ僕ハ生理的ニ彼女ノヨウニアノ方ノ慾望《よくぼう》ガ旺盛《おうせい》デナク、ソノ点デ彼女ト太刀打《たちう》チデキナイ。僕ハ今年五十六歳(彼女ハ四十五ニナッタハズダ)ダカラマダソンナニ衰エル年デハナイノダガ、ドウイウワケカ僕ハアノニハ疲レヤスクナッテイル。正直ニ云ッテ、現在ノ僕ハ週ニ一回クライ、―――ムシロ十日ニ一回クライガ適当ナノダ。トコロガ彼女ハ(コンナヲ露骨ニ書イタリ話シタリスルヲ彼女ハ最モ忌《い》ムノデアル)腺病質《せんびょうしつ》デシカモ心臓ガ弱イニモカカワラズ、アノ方ハ病的ニ強イ。サシアタリ僕ガハナハダ当惑シ、参ッテイルノハ、コノ一事ナノダ。僕ハ夫トシテ、彼女ニ十分ノ義務ヲ果タシ得ナイノハ申シワケガナイケレドモ、ソウカトイッテ、彼女ガソノ不足ヲ補ウタメニ、モシ仮リニ、―――コンナヲ云ウト、私ヲソンナミダラナ女ト思ウノデスカト怒《おこ》ルデアロウガ、コレハ「仮リニ」ダ、―――他ノ男ヲ拵《こしら》エタトスルト、僕ハソレニハ堪エラレナイ。僕ハソンナ仮定ヲ想像シタダケデモ嫉妬《しっと》ヲ感ズル。ノミナラズ彼女自身ノ健康ノヲ考エテモ、アノ病的ナ慾求ニ幾分ノ制御ヲ加エタ方ガヨイノデハアルマイカ。………僕ガ困ッテイルノハ、僕ノ体力ガ年々衰エヲ増シツツアルダ。近頃ノ僕ハ性交ノ後デ実ニ非常ナ疲労ヲ覚エル。ソノ日一日グッタリトシテモノヲ考エル気力モナイクライニ。………ソレナラ僕ハ彼女トノ性交ヲ嫌きらッテイルノカトイウト、事実ハソレノ反対ナノダ。僕ハ義務ノ観念カラ強《し》イテ情慾ヲ駆リ立テテイヤイヤ彼女ノ要求ニ応ジテイルノデハ断ジテナイ。僕ハ幸カ不幸カ彼女ヲ熱愛シテイル。ココデ僕ハ、イヨイヨ彼女ノ忌避《きひ》ニ触レル一点ヲ発《あば》カネバナラナイガ、彼女ニハ彼女自身全ク気ガ付イテイナイトコロノ或《あ》ル独得ナ長所ガアル。僕ガモシ過去ニ、彼女以外ノ種々ノ女ト交渉ヲ持ッタ経験ガナカッタナラバ、彼女ダケニ備ワッテイルアノ長所ヲ長所ト知ラズニイルデモアロウガ、若カリシ頃ニ遊ビヲシタノアル僕ハ、彼女ガ多クノ女性ノ中デモ極メテ稀《まれ》ニシカナイ器具ノ所有者デアルヲ知ッテイル。彼女ガモシ昔ノ島原《しまばら》[3]ノヨウナ妓楼《ぎろう》ニ売ラレテイタトシタラ、必ズヤ世間ノ評判ニナリ、無数ノ嫖客《ひょうかく》ガ競ッテ彼女ノ周囲ニ集マリ、天下ノ男子ハ悉《ことごと》ク彼女ニ悩殺サレタカモ知レナイ。(僕ハコンナヲ彼女ニ知ラセナイ方ガヨイカモ知レナイ。彼女ニソウイウ自覚ヲ与エルハ、少クトモ僕自身ノタメニ不利カモ知レナイ。シカシ彼女ハコレヲ聞イテ、果シテ自ラ喜ブデアロウカ恥ジルデアロウカ、アルイハマタ侮辱《ぶじょく》ヲ感ジルデアロウカ。多分表面ハ怒ッテ見セナガラ、内心ハ得意ニ感ジルヲ禁ジ得ナイノデハナカロウカ)僕ハ彼女ノアノ長所ヲ考エタダケデモ嫉妬《しっと》ヲ感ズル。モシモ僕以外ノ男性ガ彼女ノアノ長所ヲ知ッタナラバ、ソシテ僕ガソノ天与ノ幸運ニ十分酬《むく》イテイナイヲ知ッタナラバ、ドンナガ起ルデアロウカ。僕ハソレヲ考エルト不安デモアリ、彼女ニ罪深イヲシテイルトモ思イ、自責ノ念ニ堪エラレナクナル。ソコデ僕ハイロイロナ方法デ自分ヲ刺戟《しげき》シヨウトスル。タトエバ僕ハ僕ノ性慾点―――僕ハ眼ヲツブッテ眼瞼《まぶた》ノ上ヲ接吻シテ貰《もら》ウ時ニ快感ヲ覚エル、―――ヲ彼女ニ刺戟シテ貰ウ。マタ反対ニ僕ガ彼女ノ性慾点―――彼女ハ腋《わき》ノ下ヲ接吻シテ貰ウヲ好ムノデアル、―――ヲ刺戟シテ、ソレニヨッテ自分ヲ刺戟シヨウトスル。シカルニ彼女ハソノ要求ニサエアマリ快クハ応ジテクレナイ。彼女ハソウイウ「不自然ナ遊戯」ニ耽《ふけ》ルヲ欲セズ、飽クマデモオーソドックスナ正攻法ヲ要求スル。正攻法ニ到達スル手段トシテノ遊戯デアルヲ説明シテモ、彼女ハココデモ「女ラシイ身嗜ミ」ヲ固守シテソレニ反スル行為ヲ嫌ウ。彼女ハマタ僕ガ足ノ fetishist デアルヲ知ッテイナガラ、カツ彼女ハ自分ガ異常ニ形ノ美シイ足(ソレハ四十五歳ノ女ノ足ノヨウニハ思エナイ)ノ所有者デアル知ッテイナガラ、イヤ知ッテイルガユエニ、メッタニソノ足ヲ僕ニ見セヨウトシナイ。真夏ノ暑イ盛リデモ彼女ハ大概足袋ヲ穿はイテイル。セメテソノ足ノ甲ニ接吻サセテクレト云ッテモ、マア汚《きたな》イトカ、コンナ所ニ触《さわ》ルモノデハアリマセントカ云ッテ、ナカナカ願イヲ聴きイテクレナイ。ソレヤコレヤデ僕ハ一層手ノ施シヨウガナクナル。………正月早々愚痴《ぐち》ヲナラベル結果ニナッテ僕モイササカ恥カシイガ、デモコンナモ書イテオク方ガヨイト思ウ。明日ノ晩ハ「ヒメハジメ」デアル。オーソドックスヲ好ム彼女ハ毎年ノ吉例ニ従イ、必ズソノ行事ヲ厳粛ニ行ワナケレバ承知シナイデアロウ。………

      一月四日。………今日は珍しい事件に出遇であった。[4]三ガ日の間書斎の掃除をしなかったので、今日の午後、夫が散歩に出かけた留守に掃除をしにはいったら、あの水仙《すいせん》の活いけてある一輪《いちりん》ざしの載っている書棚の前に鍵が落ちていた。それは全く何でもないことなのかも知れない。でも夫が何の理由もなしに、ただ不用意にあの鍵をあんな風に落しておいたとは考えられない。夫は実に用心深い人なのだから。そして長年の間毎日日記をつけていながら、かつて一度もあの鍵を落したことなんかなかったのだから。………私はもちろん夫が日記をつけていることも、その日記帳をあの小机の抽出に入れて鍵をかけていることも、そしてその鍵を時としては書棚のいろいろな書物の間に、時としては床の絨緞《じゅうたん》の下に隠していることも、とうの昔から知っている。しかし私は知ってよいことと知ってはならないこととの区別は知っている。私が知っているのはあの日記帳の所在と、鍵の隠し場所だけである。決して私は日記帳の中を開けて見たりなんかしたことはない。だのに心外なことには、生来疑い深い夫はわざわざあれに鍵をかけたりその鍵を隠したりしなければ、安心がならなかったのであるらしい。………その夫が今日その鍵をあんな所に落して行ったのはなぜであろうか。何か心境の変化が起って、私に日記を読ませる必要を生じたのであろうか。そして、正面から私に読めと云っても読もうとしないであろうことを察して、「読みたければ内証で読め、ここに鍵がある」と云っているのではなかろうか。そうだとすれば、夫は私がとうの昔から鍵の所在を知っていたことを、知らずにいたということになるのだろうか? いや、そうではなく、「お前が内証で読むことを僕も今日から内証で認める、認めて認めないふりをしていてやる」というのだろうか?………

      まあそんなことはどうでもよい。かりにそうであったとしても、私は決して読みはしない。私は自分でここまでときめている限界を越えて、夫の心理の中にまではいり込んで行きたくない。私は自分の心の中を人に知らせることを好まないように、人の心の奥底を根掘《ねほ》り葉掘《はぼ》りすることを好まない。ましてあの日記帳を私に読ませたがっているとすれば、その内容には虚偽があるかも知れないし、どうせ私に愉快なことばかり書いてあるはずはないのだから。夫は何とでも好きなことを書いたり思ったりするがよいし、私は私でそうするであろう。実は私も、今年から日記をつけ始めている。私のように心を他人に語らない者は、せめて自分自身に向って語って聞かせる必要がある。ただし私は自分が日記をつけていることを夫に感づかれるようなヘマ Скачать книгу


<p>3</p>

Действие романа происходит в Киото. Упомянутый квартал Симабара – знаменитый «веселый» квартал с чайными домами и гейшами высокого класса в этом городе. На всем протяжении произведения в прямой речи героев можно встретить использование киотосского диалекта.

<p>4</p>

Запись из дневника жены. См. коммент. на С. 3.